傷だらけになってしまったのです。この上に接吻をして下さい。これが癒《なお》りますように……」
 彼女は冷たい手を交るがわるに私の口へあてたのです。わたしは全くいくたびも接吻しました。彼女はその間に、なんとも言われない愛情をもってわたしを見ていました。
 恥かしいことですが、わたしはセラピオン師の忠告も、また、わたしの神聖なる職業に任ぜられていることも、全く忘れていました。わたしは彼女が最初の来襲に対してなんの拒絶もなしに服従し、その誘惑をしりぞけるために僅かの努力さえもしませんでした。クラリモンドの皮膚の冷たさが沁み透って、わたしの全身はぞっとするように顫《ふる》えました。憐《あわ》れなことには、わたしはその後にもいろいろのことを見ているにもかかわらず、いまだに彼女を悪魔だと信じることができません。すくなくとも彼女は悪魔らしい様子を持っていないばかりでなく、悪魔がそれほど巧妙にその爪や角を隠すことが出来るはずがないと思っていたからです。
 彼女はうしろの方に身を引くと、いかにも倦《だる》そうな魅惑を見せながら長椅子のはしに腰をおろしました。彼女はそれからだんだんに私の髪のなかへ小さい手
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