、今度はそれが以前よりもぞっとするような、根強いものであった。
そのとき私は、ささくれ立った床《ゆか》の裂け目から何だか奇怪な物凄いような煙りが立ち昇って来て、人間には有害でありそうな毒気が次第に充満するのを見たかと思うと、ドアはさながら我が意思をもって働くように、またもやしずかにあいたので、監禁を赦《ゆる》された二人は早《そう》そうに階段のあがり場へ逃げ出した。
一つの大きい青ざめた光り――人間の形ぐらいの大きさであるが、形もなくて、ただふわふわしているのである。それが私たちの方へ動いて来て、あがり場から屋根裏の部屋へつづいている階段を昇ってゆくので、私はその光りを追って行った。Fもつづいた。
光りは階段の右にある小さい部屋にはいったが、その入り口のドアはあいていたので、私もすぐ跡《あと》からはいると、その光りはうず巻いて、小さい玉になって、非常に明かるく、あたかも生けるがごとくに輝いて、部屋の隅にある寝台の上にとどまっていたが、やがて顫《ふる》えるように消えてしまったので、私たちはすぐにその寝台をあらためると、それは奉公人などの住む屋根裏の部屋には珍らしくない半天蓋《はんてん
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