にしろその牛のために道を塞がれて引っ返すところを御用。どの道、女づれでは逃げおおせられなかったかも知れないが、この捕物には牛も一役勤めたわけだ。」
「そうすると、四年前の牛の一件が小雛の頭に強く沁み込んでいたので、この危急の場合に一種の幻覚を起したのでしょうね。」
「まあ、そうだろうな。今の人はそんな理屈であっさり片づけてしまうのだが、むかしの人はいろいろの因縁をつけて、ひどく不思議がったものさ。これで小雛が丑年の生れだと、いよいよ因縁話になるのだが、実録はそう都合よくゆかない。」
[#地から2字上げ]昭和十一年十二月作「サンデー毎日」
底本:「鎧櫃の血」光文社文庫、光文社
1988(昭和63)年5月20日初版1刷発行
1988(昭和63)年5月30日2刷
入力:門田裕志、小林繁雄
校正:松永正敏
2006年6月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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