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(十右衛門は寝ている半七をみかえり、そこに脱いである羽織を取って半七の上に着せかけ、そのまま奥に入る。和吉は半七の枕もとにある茶盆と湯呑をそっと取りにゆき、その寝顔をじっと眺めて、やがてしずかに奥へゆく。半七は少しく身を起して、そのうしろ姿を見送る。)
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伝兵衛 (気がついて。)おお、親分。お目ざめでございますか。
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(半七は無言で再びごろりとなる。九つの時の鐘きこゆ。)
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弥助 もう石町《こくちょう》の九つか。
伝兵衛 朝からなんだかごたごたしていたので、馬鹿に午《ひる》が早いようだ。
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(下のかたより常磐津文字清が取り乱した姿でかけ出して来るのを、おくめと幸次郎が追っていず。)
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おくめ おまえさん、まあ、お待ちなさいよ。
幸次郎 冗談じゃあねえ。おめえに滅多なことでもされて見ろ。おれ達が親分にどんなに叱られるか知れねえ。
文字清 いいえ、構わずに放してください。
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