。「同商売ですから、わたくしも取りあえず悔みに行って、その兜というのを見せられて実にぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]としました。死人に口無しですから、一体その兜をどこから手に入れて、引っかかえて来たのか判らないというんですが、わたくしといい、善吉といい、その兜を持っている者が続いてやられるというのは、どうも不思議じゃあありませんか。考えてみると、わたくしなぞは運がよかったんですね。兜をかぶっていたのが仕合せで、善吉のように引っかかえていたら、やっぱり真っ二つにされてしまったかも知れないところでした。」
それが兜の祟りと言い得るかどうかは疑問であるが、ともかくも邦原家から盗み出されたかの兜がどこかを転々して善吉の手に渡って、それを持ち帰る途中で彼も何者にか斬られたというのは事実である。但しその兜を奪い取る目的で彼を殺したものならば、兜が彼の手に残っているはずはない。その兜と辻斬りとは別になんの係合いもないことで、単に偶然のまわり合せに過ぎないらしく思われるので、勘十郎はその理屈を説明して聞かせたが、金兵衛はまだほんとうに呑み込めないらしかった。
その兜には何かの祟りがあって、それを持って
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