費すこと少く、物質を費すこと少きものを択んで、最も面白く、最も美しく作っている。それは人間にあたえられる自然の恩恵である。人間はその恩恵にそむいて、無用の労力を費し、無用の時間を費し、無用の金銭を費して、他の変り種のような草花の栽培にうき身をやつしているのである。そうして自然の恩恵を無条件に受入れて楽むものを、あるいは素人といい、あるいは俗物と嘲《あざけ》っているのである。こういうのはあながちに私の負惜みではあるまい。[#地から1字上げ](昭和十年五月)



底本:「岡本綺堂随筆集」岩波文庫、岩波書店
   2007(平成19)年10月16日第1刷発行
   2008(平成20)年5月23日第4刷発行
底本の親本:「思ひ出草」相模書房
   1937(昭和12)年10月初版発行
初出:「サンデー毎日」
   1935(昭和10)年6月10日号
※原題は「わが家の園芸」。
入力:川山隆
校正:noriko saito
2008年11月29日作成
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