凾館港春夜光景
宮澤賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)海霧《ガス》
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地球照ある七日の月が、
海峡の西にかかって、
岬の黒い山々が
雲をかぶってたゞずめば、
そのうら寒い螺鈿の雲も、
またおぞましく呼吸する
そこに喜歌劇オルフィウス風の、
赤い酒精を照明し、
妖蠱奇怪な虹の汁をそゝいで、
春と夏とを交雑し
水と陸との市場をつくる
……………………きたわいな
つじうらはっけがきたわいな
オダルハコダテガスタルダイト、
ハコダテネムロインデコライト
マオカヨコハマ船燈みどり、
フナカハロモエ汽笛は八時
うんとそんきのはやわかり、
かいりくいっしょにわかります
海ぞこのマクロフィスティス群にもまがふ、
巨桜の花の梢には、
いちいちに氷質の電燈を盛り、
朱と蒼白のうっこんかうに、
海百合の椀を示せば
釧路地引の親方連は、
まなじり遠く酒を汲み、
魚の歯したワッサーマンは、
狂ほしく灯影を過ぎる
……五がつははこだてこうえんち、
えんだんまちびとねがひごと、
うみはうちそと日本うみ、
りゃうばの
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