んだ。
「ははあ、こいつらはラクシャンの四人兄弟だな。よくわかった。ラクシャンの四人兄弟だ。よしよし。」
注文通り岩頸は
丁度胸までせり出して
ならんで空に高くそびえた。
一番右は
たしかラクシャン第一子
まっ黒な髪をふり乱し
大きな眼をぎろぎろ空に向け
しきりに口をぱくぱくして
何かどなってゐる様だが
その声は少しも聞えなかった。
右から二番目は
たしかにラクシャンの第二子だ。
長いあごを両手に載せて睡《ねむ》ってゐる。
次はラクシャン第三子
やさしい眼をせはしくまたたき
いちばん左は
ラクシャンの第|四子《しし》、末っ子だ。
夢のやうな黒い瞳《ひとみ》をあげて
じっと東の高原を見た。
楢《なら》ノ木大学士がもっとよく
四人を見ようと起き上ったら
俄《には》かにラクシャン第一子が
雷のやうに怒鳴り出した。
「何をぐづぐづしてるんだ。潰《つぶ》してしまへ。灼《や》いてしまへ。こなごなに砕いてしまへ。早くやれっ。」
楢ノ木大学士はびっくりして
大急ぎで又横になり
いびきまでして寝たふりをし
そっと横目で見つゞけた。
ところが今のどなり声は
大学士に云ったのでもなかったやうだ。
なぜならラクシャン第一子は
やっぱり空へ向いたまゝ
素敵などなりを続けたのだ。
「全体何をぐづぐづしてるんだ。砕いちまへ、砕いちまへ、はね飛ばすんだ。はね飛ばすんだよ。火をどしゃどしゃ噴くんだ。熔岩《ようがん》の用意っ。熔岩。早く。畜生。いつまでぐづぐづしてるんだ。熔岩、用意っ。もう二百万年たってるぞ。灰を降らせろ、灰を降らせろ。なぜ早く支度をしないか。」
しづかなラクシャン第三子が
兄をなだめて斯《か》う云った。
「兄さん。少しおやすみなさい。こんなしづかな夕方ぢゃありませんか。」
兄は構はず又どなる。
「地球を半分ふきとばしちまへ。石と石とを空でぶっつけ合せてぐらぐらする紫のいなびかりを起せ。まっくろな灰の雲からかみなりを鳴らせ。えい、意気地なしども。降らせろ、降らせろ、きらきらの熔岩で海をうづめろ。海から騰《のぼ》る泡《あわ》で太陽を消せ、生き残りの象から虫けらのはてまで灰を吸はせろ、えい、畜生ども、何をぐづぐづしてるんだ。」
ラクシャンの若い第|四子《しし》が
微笑《わら》って兄をなだめ出す。
「大兄さん、あんまり憤《おこ》らないで下さいよ。イーハトブさんが向ふの空で、又笑ってゐますよ。
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