と云った。「よし」校長は云ひながらぶるぶるふるえた。教授はじぶんも手袋をはめてないのに気がついて あ失礼と云ひながら室を出て行った。
校長は心配さうに眼をあげてそのあとを見送った。
校長の大礼服のこまやかな金彩は明るい雪の反射のなかでちらちらちらちら顫へた。何といふこの美しさだ。この人はこの正直さでこゝまで立身したのだ と富沢は思ひながら恍惚として旗をもったまゝ校長を見てゐた。



底本:「【新】校本宮澤賢治全集 第十二巻 童話5[#「5」はローマ数字、1−13−25]・劇・その他 本文篇」筑摩書房
   1995(平成7)年11月25日初版第1刷発行
※底本の本文は、草稿による。
※本文中〔〕で括られた部分は、底本の編者により校訂された箇所である。〔〕とのみあるのは、そこにあった不要の語句が校訂の結果本文から削除されたことを示す。
 (例(校訂された箇所))ございま〔す〕か
 (例(語句の削除))掲示場にはりつけられた〔〕われらはわれらの信ぜざることをなさず
入力:砂場清隆
校正:noriko saito
2008年8月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネッ
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