》いろにかがやき、黄金《きん》に燃えだしました。丘も野原もあたらしい雪でいっぱいです。
雪狼どもはつかれてぐったり座《すわ》っています。雪童子も雪に座ってわらいました。その頬《ほお》は林檎《りんご》のよう、その息は百合《ゆり》のようにかおりました。
ギラギラのお日さまがお登りになりました。今朝《けさ》は青味がかって一そう立派です。日光は桃《もも》いろにいっぱいに流れました。雪狼は起きあがって大きく口をあき、その口からは青い焔《ほのお》がゆらゆらと燃えました。
「さあ、おまえたちはぼくについておいで。夜があけたから、あの子どもを起さなけあいけない。」
雪童子は走って、あの昨日《きのう》の子供の埋《うず》まっているとこへ行きました。
「さあ、ここらの雪をちらしておくれ。」
雪狼どもは、たちまち後足で、そこらの雪をけたてました。風がそれをけむりのように飛ばしました。
かんじきをはき毛皮を着た人が、村の方から急いでやってきました。
「もういいよ。」雪童子は子供の赤い毛布《けっと》のはじが、ちらっと雪から出たのをみて叫びました。
「お父さんが来たよ。もう眼をおさまし。」雪わらすはうしろの丘にかけあがって一本の雪けむりをたてながら叫びました。子どもはちらっとうごいたようでした。そして毛皮の人は一生けん命走ってきました。
底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社
1990(平成2)年5月25日発行
1997(平成9)年5月10日17刷
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社
1924(大正13)年12月1日
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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