青く荒んではるかに消える
えゝもうけしきはいゝとこですが
冬に空気が乾くので
健康地ではないさうです
中学校の寄宿舎へ
ここから三人来てゐましたが
こどものときの肺炎で
みな演説をしませんでした
    七つ森ではつゝどりどもが
    いまごろ寝ぼけた機関銃
    こんどは一ぴき鶯が
    青い折線のグラフをつくる
あゝやって来たやっぱりひとり
まあご随意といふ方らしい
あ誰だ
電線へ石投げたのは
    くらい羊舎のなかからは
    顔ぢゅう針のささったやうな
    巨きな犬がうなってくるし
    井戸では紺の滑車が軋り
    蜜蜂がまたぐゎんぐゎん鳴る
     (イーハトーヴの死火山よ
      その水いろとかゞやく銀との襞ををさめよ)
[#改ページ]

  三三五
[#地付き]一九二五、五、一〇、

つめたい風はそらで吹き
黒黒そよぐ松の針

ここはくらかけ山の凄まじい谷の下で
雪ものぞけば
銀斜子の月も凍って
さはしぎどもがつめたい風を怒ってぶうぶう飛んでゐる
  しかもこの風の底の
  しづかな月夜のかれくさは
  みなニッケルのあまるがむで
  あち
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