いアングロアラヴ
光って華奢なサラーブレッド
風の透明な楔形文字は
ごつごつ暗いくるみの枝に来て鳴らし
またいぬがやや笹をゆすれば
ふさふさ白い尾をひらめかす重挽馬
あるいは巨きなとかげのやうに
日を航海するハックニー
馬はつぎつぎあらはれて
泥灰岩の稜を噛む
おぼろな雪融の流れをのぼり
孔雀の石のそらの下
にぎやかな光の市場
種馬検査所へつれられて行く
3
かぐはしい南の風は
かげろふと青い雲※[#「さんずい+鶲のへん」、第4水準2−79−5]を載せて
なだらのくさをすべって行けば
かたくりの花もその葉の班も燃える
黒い廏肥の籠をになって
黄や橙のかつぎによそひ
いちれつみんなはのぼってくる
みんなはかぐはしい丘のいたゞき近く
黄金のゴールを梢につけた
大きな栗の陰影に来て
その消え残りの銀の雪から
燃える頬やうなじをひやす
しかもわたくしは
このかゞやかな石竹いろの時候を
第何ばん目の辛酸の春に数へたらいゝか
[#改ページ]
七八
[#地付き]一九二四、四、二七、
向ふも春のお勤めなので
すっきり青くやってくる
町ぜんたいにかけわたす
大きな虹をうしろ
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