にあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けた
黄金の輪宝《くるま》がのぼってくるか
それともそれが巨きな銀のラムプになって
白い雲の中をころがるか
どっちにしても見ものなのだ
おゝ青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルゼンを読んでしまったら
じぶんでがまのはむばきを編み
経木の白い帽子を買って
この底なしの蒼い空気の淵に立つ
巨きな菓子の塔を攀ぢよう
[#改ページ]
三七七 九月
[#地付き]一九二五、九、七、
キャベジとケールの校圃《はたけ》を抜けて
アカシヤの青い火のとこを通り
燕の群が鰯みたいに飛びちがふのにおどろいて
風に帽子をぎしゃんとやられ
あわてて東の山地の縞をふりかへり
どてを向ふへ跳びおりて
試験の稲にたゝずめば
ばったが飛んでばったが跳んで
もう水いろの乳熟すぎ
テープを出してこの半旬の伸びをとれば
稲の脚からがさがさ青い紡錘形を穂先まで
四《ヨン》尺三寸三分を手帳がぱたぱた云ひ
書いてしまへば
あとは
Fox tail grass の緑金の穂と
何でももうぐらぐらゆれるすすきだい
……西の山では雨もふれば
ぼうと濁っ
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