、かう云《い》ふ工合《ぐあひ》に。剃《そ》らないで置きませうか。」
「いゝや、だめだよ。僕はね、きっと流行《はや》るやうな新らしい鬚《ひげ》の型を知ってるんだよ。」
「どんなんですか。」
「それはね。実は昔の西域のやり方なんだよ。斯《か》う云ふ工合に途中で円い波を一つうねらしてね、それからはじを又円くピンとはねさすんだよ。こいつぁ流行るぜ。」
「今どこで流行ってゐますか。」
「イデア界だ。きっとこっちへもだんだん来るよ。」
「イデア界。プラトンのイデア界ですか。いや。アッハッハ。」
「アツハッハ。君。どうせ顔なんか大体でいゝよ。」

          ※



底本:「新修宮沢賢治全集 第十四巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年5月15日初版第1刷発行
   1983(昭和58)年1月20日初版第4刷発行
入力:林 幸雄
校正:mayu
2003年1月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング