した。それでも日光は行李の目からうつくしくすきとおって見えました。
(とうとう※[#「穴かんむり/牛」、第4水準2−83−13]《ろう》におれははいった。それでもやっぱり、お日さまは外で照っている。)山男はひとりでこんなことを呟《つぶ》やいて無理にかなしいのをごまかそうとしました。するとこんどは、急にもっとくらくなりました。
(ははあ、風呂敷《ふろしき》をかけたな。いよいよ情けないことになった。これから暗い旅になる。)山男はなるべく落ち着いてこう言いました。
すると愕《おど》ろいたことは山男のすぐ横でものを言うやつがあるのです。
「おまえさんはどこから来なすったね。」
山男ははじめぎくっとしましたが、すぐ、
(ははあ、六神丸というものは、みんなおれのようなぐあいに人間が薬で改良されたもんだな。よしよし、)と考えて、
「おれは魚屋の前から来た。」と腹に力を入れて答えました。すると外から支那人が噛《か》みつくようにどなりました。
「声あまり高い。しずかにするよろしい。」
山男はさっきから、支那人がむやみにしゃくにさわっていましたので、このときはもう一ぺんにかっとしてしまいました。
「
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