ろこめて河にいのりました。
すると、ああ、ガンジス河、幅《はば》一|里《り》にも近い大きな水の流れは、みんなの目の前で、たちまちたけりくるってさかさまにながれました。
大王はこの恐《おそ》ろしくうずを巻《ま》き、はげしく鳴る音を聞いて、びっくりしてけらいに申《もう》されました「これ、これ、どうしたのじゃ。大ガンジスがさかさまにながれるではないか」
人々は次第《しだい》をくわしく申し上げました。
大王は非常《ひじょう》に感動《かんどう》され、すぐにその女の処《ところ》に歩いて行って申されました。
「みんなはそちがこれをしたと申しているがそれはほんとうか」
女が答えました。
「はい、さようでございます。陛下《へいか》よ」
「どうしてそちのようないやしいものにこんな力があるのか、何の力によるのか」
「陛下よ、私のこの河をさかさまにながれさせたのは、まことの力によるのでございます」
「でもそちのように不義《ふぎ》で、みだらで、罪《つみ》深《ふか》く、ばかものを生けどってくらしているものに、どうしてまことの力があるのか」
「陛下よ、全《まった》くおっしゃるとおりでございます。わたくしは畜生同然《
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