もうおいらは、あいつとは絶交だ。みっともない。黒助め。黒助、どんどん。べゴどんどん。」
その時、向ふから、眼《め》がねをかけた、せいの高い立派な四人の人たちが、いろいろなピカピカする器械をもって、野原をよこぎって来ました。その中の一人が、ふとべゴ石を見て云ひました。
「あ、あった、あった。すてきだ。実にいゝ標本だね。火山弾の典型だ。こんなととのったのは、はじめて見たぜ。あの帯の、きちんとしてることね。もうこれ丈《だ》けでも今度の旅行は沢山だよ。」
「うん。実によくととのってるね。こんな立派な火山弾は、大英博物館にだってないぜ。」
みんなは器械を草の上に置いて、ベゴ石をまはってさすったりなでたりしました。
「どこの標本でも、この帯の完全なのはないよ。どうだい。空でぐるぐるやった時の工合《ぐあひ》が、実によくわかるぢゃないか。すてき、すてき。今日すぐ持って行かう。」
みんなは、又、向ふの方へ行きました。稜《かど》のある石は、だまってため息ばかりついてゐます。そして気のいゝ火山弾は、だまってわらって居《を》りました。
ひるすぎ、野原の向ふから、又キラキラめがねや器械が光って、さっきの
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