五|疋《ひき》ちょろちょろ出て参《まい》りました。そしてホモイの前にぴょこぴょこ頭を下げて申《もう》しました。
 「ホモイさま、どうか私どもに鈴蘭《すずらん》の実《み》をお採《と》らせくださいませ」
 ホモイが、
 「いいとも。さあやってくれ。お前たちはみんな僕《ぼく》の少将《しょうしょう》だよ」
 りすがきゃっきゃっ悦《よろこ》んで仕事《しごと》にかかりました。
 この時|向《む》こうから仔馬《こうま》が六|疋《ぴき》走って来てホモイの前にとまりました。その中のいちばん大きなのが、
 「ホモイ様《さま》。私どもにも何かおいいつけをねがいます」と申《もう》しました。ホモイはすっかり悦《よろこ》んで、
 「いいとも。お前たちはみんな僕《ぼく》の大佐《たいさ》にする。僕《ぼく》が呼《よ》んだら、きっとかけて来ておくれ」といいました。仔馬《こうま》も悦《よろこ》んではねあがりました。
 むぐらが土の中で泣《な》きながら申《もう》しました。
 「ホモイさま、どうか私にもできるようなことをおいいつけください。きっと立派《りっぱ》にいたしますから」
 ホモイはまだおこっていましたので、
 「お前なんかいらないよ。今に狐《きつね》が来たらお前たちの仲間《なかま》をみんなひどい目にあわしてやるよ。見ておいで」と足ぶみをして言《い》いました。
 土の中ではひっそりとして声もなくなりました。
 それからりすは、夕方《ゆうがた》までに鈴蘭《すずらん》の実《み》をたくさん集《あつ》めて、大騒《おおさわ》ぎをしてホモイのうちへ運《はこ》びました。
 おっかさんが、その騒《さわ》ぎにびっくりして出て見て言《い》いました。
 「おや、どうしたの、りすさん」
 ホモイが横《よこ》から口を出して、
 「おっかさん。僕《ぼく》の腕《うで》まえをごらん。まだまだ僕《ぼく》はどんな事《こと》でもできるんですよ」と言《い》いました。兎《うさぎ》のお母さんは返事《へんじ》もなく黙《だま》って考えておりました。
 するとちょうど兎《うさぎ》のお父さんが戻《もど》って来て、その景色《けしき》をじっと見てから申《もう》しました。
 「ホモイ、お前は少し熱《ねつ》がありはしないか。むぐらをたいへんおどしたそうだな。むぐらの家《うち》では、もうみんなきちがいのようになって泣《な》いてるよ。それにこんなにたくさんの実《み
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