れを着ながら考えました。
「何か学問をして書記になりたいもんだな。もう投げるようなたぐるようなことは考えただけでも命が縮まる。よしきっと書記になるぞ。」
ペンネンネンネンネン・ネネムはお銭《あし》を払って店を出る時ちらっと向うの姿見にうつった自分の姿を見ました。
着物が夜のようにまっ黒、縮れた赤毛が頭から肩《かた》にふさふさ垂れまっ青な眼《め》はかがやきそれが自分だかと疑った位立派でした。
ネネムは嬉《うれ》しくて口笛《くちぶえ》を吹いてただ一息に三十ノットばかり走りました。
「ハンムンムンムンムン・ムムネの市まで、もうどれ位ありましょうか。」とペンネンネンネンネン・ネネムが、向うからふらふらやって来た黄色な影法師のばけ物にたずねました。
「そうだね。一寸ここまでおいで。」その黄色な幽霊《ゆうれい》は、ネネムの四角な袖《そで》のはじをつまんで、一本のばけものりんご[#「ばけものりんご」に傍線]の木の下まで連れて行って、自分の片足をりんごの木の根にそろえて置いて云いました。
「あなたも片足をここまで出しなさい。」
ネネムは急いでその通りしますとその黄色な幽霊は、屈《かが》んで片っ
前へ
次へ
全61ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング