います。太陽スペクトルの七色をごらんなさい。これなどは両端に赤と菫《すみれ》とがありまん中に黄があります。ちがっていますからどうも仕方ないのです。植物に対してだってそれをあわれみいたましく思うことは勿論です。印度《インド》の聖者たちは実際|故《ゆえ》なく草を伐《き》り花をふむことも戒《いまし》めました。然《しか》しながらこれは牛を殺すのと大へんな距離《きょり》がある。それは常識でわかります。人間から身体の構造が遠ざかるに従ってだんだん意識が薄《うす》くなるかどうかそれは少しもわかりませんがとにかくわれわれは植物を食べるときそんなにひどく煩悶《はんもん》しません。そこはそれ相応にうまくできているのであります。バクテリヤの事が大へんやかましいようでしたが一体バクテリヤがそこにあるのを殺すというようなことは馬を殺すというようなのと非常なちがいです。バクテリヤは次から次と分裂《ぶんれつ》し死滅《しめつ》しまるで速《すみや》かに速かに変化してるのです。それを殺すと云ったところで馬を殺すというようのとは大分ちがいます。又バクテリヤの意識だってよくはわかりませんがとにかく私共が生れつきバクテリヤにつ
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