です。則《すなわ》ち論難者は、そのうち動物を食べないじゃ食料が半分に減ずるというこいつです。冗談じゃありませんぜ。一体その動物は何を食って生きていますか。空気や岩石や水を食べているのじゃないのです。牛や馬や羊は燕麦《オート》や牧草をたべる。その為《ため》に作った南瓜《かぼちゃ》や蕪菁もたべる。ごらんなさい。人間が自分のたべる穀物や野菜の代りに家畜の喰べるものを作っているのです。牛一頭を養うには八エーカーの牧草地が要《い》ります。そこに一番計算の早い小麦を作って見ましょうか。十人の人の一年の食糧《しょくりょう》が毎年とれます。牛ならどうです。一年の間に肥《ふと》る分左様百六十キログラムの牛肉で十人の人が一年生きていられますか。一人一日五十グラムですよ。親指三本の大さですよ。腹が空《へ》りはしませんか。
 よくおわかりにならないようですがもっと手短かに云いますともし人間が自然と相談して牛肉や豚肉の代りに何か損にならないものをよこして呉《く》れと云えば今よりもっとたくさんの人間が生きて行かれる位多くの喰べものを向うではよこすと斯《こ》う云うことです。但《ただ》しこれは海産物と廃物《はいぶつ》
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