た。
「柱さん。お前もずいぶんひどい人だ。僕のような弱いものをこんな目にあわすなんて。」
柱はいかにも申しわけがないと思ったので、
「ねずみさん、すまなかった。ゆるしてください。」と一生けん命わびました。
ツェねずみは図にのって、
「許してくれもないじゃないか。お前さえあんなこしゃくなさしずをしなければ、私はこんな痛い目にもあわなかったんだよ。償《まど》っておくれ。償っておくれ。さあ、償っておくれよ。」
「そんなことを言ったって困るじゃありませんか。許してくださいよ。」
「いいや、弱いものをいじめるのは私はきらいなんだから、償っておくれ。償っておくれ。さあ、償っておくれ。」
柱は困ってしまって、おいおい泣きました。そこでねずみも、しかたなく、巣へかえりました。それからは、柱はもうこわがって、ねずみに口をききませんでした。
さてそののちのことですが、ちりとりはある日、ツェねずみに半分になった最中《もなか》を一つやりました。するとちょうどその次の日、ツェねずみはおなかが痛くなりました。さあ、いつものとおりツェねずみは、まどっておくれを百ばかりも、ちりとりに言いました。ちりとりもあき
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