たをもきらめかします。私に与《あた》えられたすべてのほめことばは、そのままあなたに贈《おく》られます。」
「私を教えて下さい。私を連れて行ってつかって下さい。私はどんなことでもいたします。」
「いいえ私はどこへも行きません。いつでもあなたが考えるそこに居《お》ります。すべてまことのひかりのなかに、いっしょにすんでいっしょにすすむ人人は、いつでもいっしょにいるのです。けれども、わたくしは、もう帰らなければなりません。お日様があまり遠くなりました。もずが飛び立ちます。では。ごきげんよう。」
 停車場の方で、鋭《するど》い笛《ふえ》がピーと鳴り、もずはみな、一ぺんに飛び立って、気違《きちが》いになったばらばらの楽譜のように、やかましく鳴きながら、東の方へ飛んで行く。
「先生。私をつれて行って下さい。どうか私を教えてください。」
 うつくしくけだかいマリヴロンはかすかにわらったようにも見えた。また当惑《とうわく》してかしらをふったようにも見えた。
 そしてあたりはくらくなり空だけ銀の光を増せば、あんまり、もずがやかましいので、しまいのひばりも仕方なく、もいちど空へのぼって行って、少うしばかり調子はずれの歌をうたった。



底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
   1989(平成元)年6月15日発行
   1994(平成6)年6月5日13刷
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年1月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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