になって踊りだしました。七八人のようではありましたが、たしかにもうほんもののオーケストラが愉快そうなワルツをやりはじめました。一まわり踊りがすむとみんなはばらばらになってコップをとりました。そしてわあわあ叫びながら呑みほしています。その叫びは気のせいか、デストゥパーゴ万歳というようにもきこえました。
「あれが山猫博士だな。」ファゼーロが向うの卓にひとり坐って、がぶがぶ酒を呑んでいる黄いろの縞のシャツと赤皮の上着を着た肩はばのひろい男を指さしました。
誰か六七人コンフェットウや紐を投げましたので、それは雪のように花のようにきらきら光りながらそこらに降りました。
わたくしどもはもう広場の前まで来て立ちどまりました。
ちょうどそのときデストゥパーゴがコップをもって立ちあがりました。
「おいおい給仕、なぜおれには酒を注がんか。」
すると白い服を着た給仕が周章《あわ》てて走り寄りました。
「はいはい相済みません。坐っておいでだったもんですからつい。」
「坐っておいでになっても立っておいでになっても、我輩《わがはい》は我輩じゃないか。おっとよろしい。諸君は我輩のために乾杯しようというんだな
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