やまなし
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)幻燈《げんとう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|疋《ひき》の
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小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈《げんとう》です。
一、五月
二|疋《ひき》の蟹《かに》の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳《は》ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼《はがね》のように見えます。そのなめらかな天井《てんじょう》を、つぶつぶ暗い泡《あわ》が流れて行きます。
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。
つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽっぽっぽっとつづけて五六|粒《つぶ》泡を吐《は》きました。それはゆれながら水銀のように光って斜《なな》めに上の方へのぼって行きました。
つうと銀のいろの腹をひるがえして、一疋の魚が頭の上を過ぎて行きました。
『
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