した。
「あっこれだ。これがおれたちの親方の紋だ。」
 そしてポキリと枝を折りました。赤いダァリヤはぐったりとなってその手のなかに入って行きました。
「どこへいらっしゃるのよ。どこへいらっしゃるのよ。あたしにつかまって下さいな。どこへいらっしゃるのよ。」二つのダァリヤも、たまらずしくりあげながら叫びました。
 遠くからかすかに赤いダァリヤの声がしました。
 その声もはるかにはるかに遠くなり、今は丘のふもとのやまならしの梢《こずゑ》のさやぎにまぎれました。そして黄色なダァリヤの涙の中でギラギラの太陽はのぼりました。



底本:「新修宮沢賢治全集 第十一巻」筑摩書房
   1979(昭和54)年11月15日初版第1刷発行
   1983(昭和58)年12月20日初版第5刷発行
※底本は旧仮名ですが、拗促音は小書きされています。これにならい、ルビの拗促音も、小書きにしました。
入力:林 幸雄
校正:土屋隆
2008年2月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあ
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