然な顔つきにみえた
けれどもたしかにうなづいた
※[#始め二重パーレン、1−2−54]ヘツケル博士!
わたくしがそのありがたい証明の
任にあたつてもよろしうございます※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
仮睡硅酸《かすゐけいさん》の雲のなかから
凍らすやうなあんな卑怯な叫び声は……
(宗谷海峡を越える晩は
わたくしは夜どほし甲板に立ち
あたまは具へなく陰湿の霧をかぶり
からだはけがれたねがひにみたし
そしてわたくしはほんたうに挑戦しよう)
たしかにあのときはうなづいたのだ
そしてあんなにつぎのあさまで
胸がほとつてゐたくらゐだから
わたくしたちが死んだといつて泣いたあと
とし子はまだまだこの世かいのからだを感じ
ねつやいたみをはなれたほのかなねむりのなかで
ここでみるやうなゆめをみてゐたかもしれない
そしてわたくしはそれらのしづかな夢幻が
つぎのせかいへつゞくため
明るいいゝ匂のするものだつたことを
どんなにねがふかわからない
ほんたうにその夢の中のひとくさりは
かん護とかなしみとにつかれて睡つてゐた
おしげ子たちのあけがたのなかに
ぼんや
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