栗鼠と色鉛筆
樺の向ふで日はけむる
つめたい露でレールはすべる
靴革の料理のためにレールはすべる
朝のレールを栗鼠は横切る
横切るとしてたちどまる
尾は der Herbst
日はまつしろにけむりだし
栗鼠は走りだす
水そばの苹果緑《アツプルグリン》と石竹《ピンク》
たれか三角やまの草を刈つた
ずゐぶんうまくきれいに刈つた
緑いろのサラアブレツド
日は白金をくすぼらし
一れつ黒い杉の槍
その早池峰《はやちね》と薬師岳との雲環《うんくわん》は
古い壁画のきららから
再生してきて浮きだしたのだ
色鉛筆がほしいつて
ステツドラアのみじかいペンか
ステツドラアのならいいんだが
来月にしてもらひたいな
まああの山と上の雲との模様を見ろ
よく熟してゐてうまいから
[#地付き](一九二二、一〇、一五)
[#改丁、ページの左右中央に]
無声慟哭
[#改ページ]
永訣の朝
けふのうちに
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゆとてちてけんじや)*
うすあかくいつそう陰惨
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