はち空の模様がちがつてゐる
そして今度は月が蹇《ちぢ》まる
[#地付き](一九二二、九、一八)
[#改ページ]
(犬、マサニエロ等)
犬
なぜ吠えるのだ 二疋とも
吠えてこつちへかけてくる
(夜明けのひのきは心象のそら)
頭を下げることは犬の常套《じやうたう》だ
尾をふることはこはくない
それだのに
なぜさう本気に吠えるのだ
その薄明《はくめい》の二疋の犬
一ぴきは灰色錫
一ぴきの尾は茶の草穂
うしろへまはつてうなつてゐる
わたくしの歩きかたは不正でない
それは犬の中の狼のキメラがこはいのと
もひとつはさしつかへないため
犬は薄明に溶解する
うなりの尖端にはエレキもある
いつもあるくのになぜ吠えるのだ
ちやんと顔を見せてやれ
ちやんと顔を見せてやれと
誰かとならんであるきながら
犬が吠えたときに云ひたい
帽子があんまり大きくて
おまけに下を向いてあるいてきたので
吠え出したのだ
[#地付き](一九二二、九、二七)
[#改ページ]
マサニエロ
城のすすきの波の上には
伊太利亜製の空間がある
そこで烏の群が踊る
白雲母《しろうんも》のくもの幾きれ
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