の上にかがやき
 さうだ オリオンの右肩から
 ほんたうに鋼青の壮麗が
 ふるへて私にやつて来る

三つの提灯は夢の火口原の
白いとこまで降りてゐる
※[#始め二重パーレン、1−2−54]雪ですか 雪ぢやないでせう※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
困つたやうに返事してゐるのは
雪でなく 仙人草のくさむらなのだ
さうでなければ高陵土《カオリンゲル》
残りの一つの提灯は
一升のところに停つてゐる
それはきつと河村慶助が
外套の袖にぼんやり手を引つ込めてゐる
※[#始め二重パーレン、1−2−54]御室《おむろ》の方の火口へでもお入りなさい
噴火口へでも入つてごらんなさい
硫黄のつぶは拾へないでせうが※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
斯んなによく声がとゞくのは
メガホーンもしかけてあるのだ
しばらく躊躇してゐるやうだ
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]先生 中さ入《はひ》つてもいがべすか※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
※[#始め二重パーレン、1−2−54]えゝ おはひりなさい 大丈夫です※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
提灯が三つ沈んでしまふ
そのでこぼ
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