つぎ棒をわたせば
それは太陽のマヂツクにより
磁石のやうにもひとりの手に吸ひついた
(コロナは七十七万五千……)
どのこどもかが笛を吹いてゐる
それはわたくしにきこえない
けれどもたしかにふいてゐる
(ぜんたい笛といふものは
きまぐれなひよろひよろの酋長だ)
みちがぐんぐんうしろから湧き
過ぎて来た方へたたんで行く
むら気な四本の桜も
記憶のやうにとほざかる
たのしい地球の気圏の春だ
みんなうたつたりはしつたり
はねあがつたりするがいい
パート五[#ゴシック体] パート六[#ゴシック体]
パート七[#ゴシック体]
とびいろのはたけがゆるやかに傾斜して
すきとほる雨のつぶに洗はれてゐる
そのふもとに白い笠の農夫が立ち
つくづくとそらのくもを見あげ
こんどはゆつくりあるきだす
(まるで行きつかれたたび人だ)
汽車の時間をたづねてみよう
こゝはぐちやぐちやした青い湿地で
もうせんごけも生えてゐる
(そのうすあかい毛もちゞれてゐるし
どこかのがまの生えた沼地を
ネー将軍|麾《き》下の騎兵の馬が
泥に一尺ぐらゐ踏みこんで
すぱすぱ渉つて進軍
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