のしばくさだ
おれたちの影は青い沙漠|旅行《りよかう》
そしてそこはさつきの銀杏《いてふ》の並樹
こんな華奢な水平な枝に
硝子のりつぱなわかものが
すつかり三角になつてぶらさがる
[#地付き]※[#始め二重パーレン、1−2−54]一九二二、五、一八※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
[#改ページ]

  蠕虫舞手《アンネリダタンツエーリン》


 (えゝ 水ゾルですよ
  おぼろな寒天《アガア》の液ですよ)
日は黄金《きん》の薔薇
赤いちひさな蠕虫《ぜんちゆう》が
水とひかりをからだにまとひ
ひとりでをどりをやつてゐる
 (えゝ 8《エイト》 γ《ガムマア》 e《イー》 6《スイツクス》 α《アルフア》[#8からαまでアラベスクの飾り文字。以下同様]
  ことにもアラベスクの飾り文字)
羽むしの死骸
いちゐのかれ葉
真珠の泡に
ちぎれたこけの花軸など
 (ナチラナトラのひいさまは
  いまみづ底のみかげのうへに
  黄いろなかげとおふたりで
  せつかくをどつてゐられます
  いゝえ けれども すぐでせう
  まもなく浮いておいででせう)
赤い蠕虫舞手《アンネリダタンツエーリン》
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