パーレン、1−2−55]
どうして決して そんなことはない
いまきらめきだすその真鍮の畑の一片から
明暗交錯のむかふにひそむものは
まさしく第七梯形の
雲に浮んだその最後のものだ
緑青を吐く松のむさくるしさと
ちぢれて悼む 雲の羊毛
(三角《さんかく》やまはひかりにかすれ)
[#地付き](一九二三、九、三〇)
[#改ページ]
火薬と紙幣
萱の穂は赤くならび
雲はカシユガル産の苹果の果肉よりもつめたい
鳥は一ぺんに飛びあがつて
ラツグの音譜をばら撒きだ
古枕木を灼いてこさへた
黒い保線小屋の秋の中では
四面体|聚形《しゆうけい》の一人の工夫が
米国風のブリキの缶で
たしかメリケン粉を捏《こ》ねてゐる
鳥はまた一つまみ 空からばら撒かれ
一ぺんつめたい雲の下で展開し
こんどは巧に引力の法則をつかつて
遠いギリヤークの電線にあつまる
赤い碍子のうへにゐる
そのきのどくなすゞめども
口笛を吹きまた新らしい濃い空気を吸へば
たれでもみんなきのどくになる
森はどれも群青に泣いてゐるし
松林なら地被もところどころ剥げて
酸性土壌
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