堺なのだ
見たまへこの電車だつて
軌道から青い火花をあげ
もう蝎かドラゴかもわからず
一心に走つてゐるのだ
(豆ばたけのその喪神《さうしん》のあざやかさ)
どうしてもこの貨物車の壁はあぶない
わたくしが壁といつしよにここらあたりで
投げだされて死ぬことはあり得過ぎる
金をもつてゐるひとは金があてにならない
からだの丈夫なひとはごろつとやられる
あたまのいいものはあたまが弱い
あてにするものはみんなあてにならない
たゞもろもろの徳ばかりこの巨きな旅の資糧で
そしてそれらもろもろの徳性は
善逝《スガタ》から来て善逝《スガタ》に至る
[#地付き](一九二三、九、一六)
[#改ページ]
第四梯形
青い抱擁衝動や
明るい雨の中のみたされない唇が
きれいにそらに溶けてゆく
日本の九月の気圏です
そらは霜の織物をつくり
萱《かや》の穂の満潮《まんてう》
(三角山《さんかくやま》はひかりにかすれ)
あやしいそらのバリカンは
白い雲からおりて来て
早くも七つ森第一|梯形《ていけい》の
松と雑木《ざふぎ》を刈《か》りおとし
野原がうめばちさうや山羊の乳
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