まで上がつたからこそ、下から鱶に襲はれないですんだのだ。いつてみりやあの亀は身を以《もつ》て、鱶からお前を護《まも》つてくれたんだ。お前の生命《いのち》を救つてくれたのさね。去年の亀の親かも知れない。或は親の又親ぐらゐかも知れんよ。何しろ大きな亀だつたからね。百年以上の歳《とし》をとつてゐたらう。親にしろ親の親にしろ、お前が善いことをした酬《むく》ひは、ひとりでに来たわけだ。亀も始終海の底を歩いてゐるから、いつてみりや、あれも一種の潜水夫で、我々のお仲間さ。別に害をしないものだから、こつちからもひどいことをしないがいゝ。そしたら先方でも、今度のやうな善い事をしてもくれようからな」
× ×
今太郎君はその後お父さん以上の名潜水夫となつて、南洋の海底に活躍してゐます。
底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「新しい童話 五年生」金の星社
1935(昭和10)年8月
初出:「少年倶楽部」講談社
1932(昭和7)年7月
入力:tatsuki
校正:鈴木厚司
2006年3月21日作成
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