よく似てゐるの。」
「ウン、それぢや、僕も行つてみたいな。おつ母《か》さん、僕《ぼく》をつれて行かない、天へ遊びに。」
天人は悲しさうに頭をふりました。そして天《あめ》の羽衣といふものが無ければいかれない。その羽衣は、伯良《はくりやう》がどこかに隠してゐて、どうしても渡して呉《く》れないから、迚《とて》もその望みをかなへることは出来ないと、言ひました。
三
それから又《また》三日ばかり経《た》つて、天人が空を眺《なが》めてゐますと、子良《しりやう》がこつそりと来て、その袖《そで》を引いて、囁《ささや》きました。
「あのね、羽衣の在所《ありか》が分つたよ。」
「えつ、本当かい。」
と、母の天人は眼《め》を丸くしました。
「本当とも、けれどもね、僕《ぼく》には取れないところにあるんだ。」
子良は、今朝お父さんの伯良《はくりやう》が、天井裏にある網を下すとき、小さなつゞらを、一緒におろし、その蓋《ふた》をあけたら美しい着物が出て来たので、何かと訊《き》いてみたら、之《これ》は天《あめ》の羽衣といふものでお母さんがお嫁に着て来た大事なものだ。他人に知れると盗まれるから、誰《たれ》にも言つてはいけないぞと、伯良が言つたのでした。
「あゝ有難い、それでは直《す》ぐそれを着て、天に昇りませう。」
天人は大喜びで、伯良が沖に漁に出た留守を見はからひ、そのつづらの中から天の羽衣を出して、着ました。さて子良を背《せな》におぶつて、天へヒラ/\/\と昇らうとしました。ところがドツコイそんなうまいことは出来ません。如何《いか》に昇らうとしても、身体《からだ》がちつとも浮かないのです。
「ハア悲しい。困つた。」
と、天人は目に涙をためて、口惜《くや》しがりました。
「子良や迚《とて》も此《この》羽衣だけではお前までつれて昇る力がありません、お前は此地《このち》にピツタリとくつついて離れることの出来ない人間の血をうけてゐるから、なかなか重たくて迚もダメです。」
「ではおつ母《か》さん、僕《ぼく》つれていかないの。どうしてもいけない?」
「ダメ/\、あとで、また何とかしませう。今はダメ。誰かに見付かつて、又羽衣をとられるといけないから、お母さんは直ぐ帰ります。待つておいで、左様なら、左様なら!」
天人は子良が自分を慕つて泣くのに引かされ、自分も涙を流しましたが、故郷《ふる
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