孝行鶉の話
宮原晃一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)薄藪《すすきやぶ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|簪《かんざし》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うづ[#「うづ」に傍点]公

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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    一

 ある野原の薄藪《すすきやぶ》の中に、母と子との二匹の鶉《うづら》が巣を構へてをりました。母鶉はもう年よりなので羽が弱くて、少し遠いところには飛んで行くことが出来ませんでした。ですから巣から余り遠くないところで、小さな虫を捕つたり、粟《あは》の穂を拾つたりして、少しづゝ餌《ゑ》をあつめてをりました。子鶉は至つて親孝行で、毎日朝早くから巣を飛び出して、遠くへ餌をあさりに出かけ、夕方になつて帰つて参ります。そしていろ/\おいしいものを持つて来てはおつ母さんの鶉に喰《た》べさしてをりました。
 さうするうちに秋も更けて、丁度|中頃《なかごろ》になりましたから、冬の間に喰べるものを貯《たくは》へなくてはなりません。そこで
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