らはれ、次ぎにキリスト教が渡來して、それをキリスト教的に變化させ、同時にラテン文化を傳播する。その次にはフランス古典文學が支配し、やがて宗教改革が起つて、國語及び國民傳統の尊重となり、ローマン主義の勃興となり、自然主義の隆盛となり、それが終つて、新ローマン主義、農民文學、郷土文學或は勞働文學が起つたといふ順序で發達するといふのであります。然しフゥツリズム Futurism・ダダイズム Dadaism・シュルレアリズム 〔Surre'alisme〕・或は表現主義 Expressionismus. 即物主義 Neue−sachlichkeit といふやうな、ひどく風變りのものは、スカンヂナヴィア文學には殆んどありませぬ。スカンヂナヴィア文學の主流はどこまでもローマン主義であるやうに思はれます。
       三、古代文學の共通
 さて、デンマルク、ノルウェイ、スウェデン三國の古代文學はいづれもみな共通で、古代ノルウェイ。イスランド文學といふ總括した名稱でよぶことができます。言葉を換へて申しますと、昔イスランドに渡つたノルウェイ人が、そこに古い原形のまゝに保存した文學、またその後そこ及びノルウェイ本土で發達した文學であります。このイスランド・ノルウェイ文學のうちで、一篇の書物として殘された最初のものが『エッダ』Edda であるといつてよいかと存じます。それ以前にもルゥネ Rune といふ、一種の神代文字で石や木や骨などに刻みつけた歌謠がありますが、これは文學よりも寧ろ考古學、言話學的の方面に興味が多からうと思つて、ここには省くことにします。
 さて『エッダ』とは何かと申しますと、歌をもつて書きしるした神話並に神仙的英雄の行蹟であります。日本で言ふならば、古事記か日本書紀のやうなものであります。『エッダ』に舊と新との二つがあります。舊をセームンダール・エッダ Semundar Edda、新をスノルィ・ストゥルソンナール・エッダ Snorri Sturlussonar E. と申します。セームンドのエッダ、ストゥルソンのエッダと申す意味であります。然し一口に『エッダ』と申せば、舊エッダのことだけで、新エッダの場合には特に新とか、ストゥルソンとかいふ名を冠することになつてをります。
       四、『エッダ』の解説
『エッダ』とは古代北歐語で第一に大祖母といふ意味であります。
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