ど目元には。どこやらうるみの見ゆるもことわりなりと。一郎はことほぎ詞《ことば》も深くはいわず。すべり出でたるその跡より一座の人々誰彼とおのがまにまに祝いを述べつ。例の斎藤はほろ酔《え》い気げんの高調子。
斎藤「オイなみ子さんじゃなかった。ミスセス宮崎。あなたとあの浜子さんとは。随分仲をよくしていたようだったが。あんなことになってしまい。今日なんぞはなんでも第一の上客というはずだのに。つまらないじゃアないか。浪子「さようでござります」と挨拶のみ。跡を何ともいわざるは。上座におわす篠原の女隠居に遠慮あるゆえとは斎藤心づかなく、またそろ勤に向い。
「コレ勤君あの山中というやつは。あんなわるいことをする度胸なんぞのある奴ではないが。ただ一生懸命に故大人《こたいじん》の御気げんをとろうというところから。ソレ浜子さんは御愛嬢だから。竈《かまど》に媚《こ》びるという主義から。おべっかりがあんまり過ぎて。とうとうソレ……。だがそれもしかたがない。君があれまでにしてやったのに。あいつも例のシャーつくで。結構この上もない華族様の婿がねと。大きなつらをしたっても。実はこうだ。と僕初めいうものがあるものか。そ
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