ーよめた。西洋はきらいになったぞといって。実は何ですネ。この節の流行のゴオールデンヘヤの令嬢と契約したというようなわけで。今にそれがやって来るという……。
篠原「とんでもない御嫌疑《ごけんぎ》だ。実に何にもありはしないが。ツマリいやになったというわけは。一生苦楽をともにしようという目的がたたないからサ。しかし君たちのいうのもうそでない。なるほど僕の心事は一変した。欧州に遊歴して見ると。なかなかここで想像して書籍中にもとめたとは。大いにちがったところがある。実に豁然《かつぜん》通悟したところがあって。なんでも人間は道徳が大事だということにきがついた。
斎「ハテネそうして。
篠「ところが帰朝してみると。親父が例の洋癖家だろう。またそれに仕こまれたものだから。やれ今では巴里《ぱり》ではどんなかみの風が流行《はやる》の。どんな服製がはやるのと。そんなことばかり聞きたがるのサ。僕は西洋の学問と芸術には感心するが。風俗には決して心酔はしない。男女だかれあって蹈舞《とうぶ》するなんどは。あまりみともいいことでもない。それに少男少女のいまだ婚姻しないものなら。婚姻の手段の一端にて。支那《しな》にいわゆ
前へ
次へ
全69ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 花圃 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング