ゃとかたまり合っているように見えました。彼等のからだがあまりぴったりくっつき合っているので、ビレラフォンはどれがどれやら区別がつきませんでした。しかし、それらの頭から判断して、一つは大きな蛇で、次が獰猛《どうもう》な獅子で、三番目はこわいような山羊だということが分りました。獅子と山羊とは眠っていました。蛇はすっかり目をさましていて、ぎらぎらした二つの大きな目で、絶えずあたりを見廻していました。しかし――これが一番不思議なことでしたが――三すじの煙は、あきらかにこれら三つの頭の鼻の孔から出ているのでした! その有様があまりに奇怪だったので、ビレラフォンはそれに出遇うことをずっと心待ちにして来たのでありながら、おそろしい三つの頭をしたカイミアラがここにいるのだという事実に、すぐには気がつきませんでした。彼はカイミアラの洞窟を見つけたのでした。蛇と、獅子と、山羊とは、彼が思ったように、三つの別な動物ではなく、一疋の怪物だったのです。
ひどい、憎むべき奴! 三つの頭のうちの二つは居眠りしながら、そいつはまだ、おそろしい爪で、あわれな小羊の食い残りをつかんでいました――そうは考えたくないけれども、どうかすると、それは可愛い小さな子供だったかも知れません――いずれにしても、二つの頭がまだ起きていた時、三つの口でそれをむしゃむしゃ食っていたのです!
突然、ビレラフォンは夢から醒《さ》めたような気がして、それがカイミアラだったことが分りました。ペガッサスも同時にそれが分ったと見えて、一声高くいななきましたが、それはちょうど戦闘開始の喇叭《らっぱ》を吹きならしたようにひびきました。この音に、怪物は三つの頭をまっすぐに立てて、めらめらっと大きな火を噴き出しました。ビレラフォンが次にどうしたらいいかと考える暇もなく、怪物は洞穴から飛び出して来て、大きな爪をのばし、蛇のような尻尾をうしろの方で毒々しくよじりながら、彼にむかって、まっすぐに飛びかかって来ました。もしもペガッサスが鳥のようにはしっこくなかったら、彼も乗り手も一しょに、カイミアラのこのめちゃくちゃな突撃に遭《あ》って、ひっくりかえされて、闘いはろくに始まりもしないで、そのままおしまいになってしまったでしょう。しかし翼のある馬は、そんな手は喰いませんでした。一瞬の後には、彼は雲の半分どころまで昇っていて、怒って鼻を鳴らしました。また彼は、からだをふるわせていましたが、決してこわかったからではなく、三つの頭をした、その毒を持った怪物の憎らしさに、心からむかむかとしたからでした。
一方、カイミアラの方は、全く尻尾の尖《さき》で立っているような恰好で立上って、爪ではげしく空《くう》を掻《か》き、その三つの口から、ペガッサスとその乗り手とにむかって火を噴きかけました。いやはや、それが唸ったり、しゅっしゅっというような声を出したり、吼えたりすることと言ったら! ビレラフォンは、その間に盾を腕につけ、剣を抜きにかかっていました。
『さあ、僕の愛するペガッサスよ、』と彼は翼のある馬の耳に囁きました、『お前は僕がこの小癪《こしゃく》な怪物を退治るのを加勢しなければならない。それがいやなら、お前の友ビレラフォンを捨てて、お前の淋しい山の峯に飛んで帰れ。カイミアラが死ぬか、お前の頸にもたれて眠った僕のこの頭を、あの三つの口に食われてしまうか、なんだから!』
ペガッサスはいなないて、それから首をうしろに向けて、その鼻をやさしく乗り手の頬にすりつけました。こうしてペガッサスは、翼のある不死の馬ながら、もしも不死の命も死ぬことが出来るものなら、ビレラフォンを捨てて帰るよりも死んだ方がいいという意味を伝えたのでした。
『ありがとう、ペガッサス、』とビレラフォンは答えました。『さあ、それではあの怪物めがけて突撃しよう!』
そう言いながら、彼は手綱を振りました。そこでペガッサスは、その間もずっと、出来るだけ高くつき出していたカイミアラの三つになった頭をめがけて、矢のような速さで、斜《ななめ》下に飛びかかって行きました。手のとどくところまで来た時、ビレラフォンは怪物に斬りつけましたが、その一太刀に手ごたえがあったかどうか見とどける暇もなく、ペガッサスは先へ行き過ぎてしまいました。ペガッサスはそのまま進んでいましたが、前と同じくらいカイミアラからはなれたところまで来ると、すぐまた、くるりと向きを変えました。その時ビレラフォンは、自分が怪物の山羊首をほとんど切り落して、それが皮だけでだらりとぶら下がって、全く死んでいるらしいのを見ました。
しかし、その埋合せに、蛇首と獅子首とは、死んだ山羊首のはげしさを全部彼等で引受けて、前よりもはるかにものすごく、火を噴き、しゅっしゅっと鳴き、そして吼え立てました。
『大丈夫だ、勇
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