ォッシュ・ブロッサムがくたびれて来ると、彼はかわるがわる彼等を背中に負ってやって登った。こんな風にして、彼等は丘の裾の方の果樹園や牧場を過ぎて、林のところまで登って来たのだった。その林は、それから禿げになった頂上の方まで、ずうっとつづいていた。
 五月の月は、その頃までは、例年よりは一層気持がよく、今日はまた大人にも子供にも、こんなこころよい、さわやかな日はないという気がした。丘を登るみちみち、子供達は、紫や白や、それからまるでマイダスがさわったのかと思われるような金色などの菫を見つけた。花草のうちでも一番かたまって生えるのが好きな、小さなフサトニヤが、一杯あった。それは決してひとりでは生えないで、仲間を慕《した》って、いつも好んで大勢の友達や肉親に取巻かれて生えていた。時には手平《てのひら》ほどしかない広さに、一家族で生えているのを見ることもあれば、時には放牧場全体を真白にするくらい大きな社会をつくって、お互に元気をつけ合って、楽しく暮らしているのを見ることもある。
 林の中へはいったばかりのところに、おだまき草があった。それらは大変内気で、出来るだけお日様に当らないように引込んでいるのをたしなみと心得ているとみえて、赤いというよりも蒼ざめた色に見えた。また、野生のゼラニウムや、沢山の白い苺の花も咲いていた。岩梨もまだ花時を過ぎてはいなかったが、その大切な花を、母鳥が小さな雛を大事に羽根の下にかくすように、林の去年の落葉の下にかくしていた。それは大方、自分の花がどんなに美しく、またいい匂いがするかを知っていたのであろう。それはあまりうまくかくれていたので、子供達はどこから匂って来るのか分らないうちから、その何ともいえない、いい匂いを嗅ぐことさえ時々あった。
 こんなに沢山の新しい生命のある中に、野原や牧場のあちこちで、もう種になってしまったたんぽぽの白い鬘《かつら》を見ると、何だか変でもあり、ひどくいたましい気もするのであった。それらは夏の来ないうちに夏を済ませてしまったようなものだ。それらの、羽根の生えた種で出来た小さな球《たま》の中だけは、もう秋になっているのだった!
 それはさておき、われわれは春と野の花草とについてこれ以上おしゃべりをして、貴重な頁を無駄にしてはならない。何かもっと面白い話題がありそうなものだ。もしも読者が子供達の群《むれ》に目をやったならば、彼等がみんなでユースタスを取巻いて集まっているのを見るだろう。彼は木の切株に腰かけて、ちょうどこれから何か話を始めるところらしい。実は、子供達のうちの小さい方の連中には、この丘の長い登り道が、彼等の小さい股ではとてものぼり切れないということが分ったのだ。だから、従兄ユースタスは、ほかの連中が頂上まで行って帰ってくるまで、登り道の中程にあたるこの辺のところに、スウィート・ファーンとカウスリップとスクォッシュ・ブロッサムとダンデライアンとを残しておくことにきめたのだ。しかし、彼等が不平を言って、あまりあとに残りたがらないので、彼はポケットからいくつかの林檎を出して来て、彼等にくれてやり、その上、彼等に大変いい話を聞かせてやろうと言って見た。すると彼等は機嫌をなおして、泣面《なきつら》が大にこにこに変ってしまった。
 その話のことなら、わたしはその辺の藪のかげにいて、それを聞いたので、次の頁からまた、それを読者にお伝えしようと思う。
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    不思議の壺

 ずっと昔の或る夕方のこと、フィリーモン爺さんと、そのおかみさんのボーシス婆さんとが、彼等の小さなお家《うち》の戸口に坐って、静かな、美しい日暮時《ひぐれどき》を楽しんでいました。彼等はもう、つましい夕飯もすんで、寝るまでの一二時間を、静かに過ごそうというのでした。そんなわけで、彼等は家の庭のことや、乳牛のことや、蜜蜂のことや、葡萄の木のことなどを語りあいました。葡萄の木はお家の壁一杯に這っていて、葡萄が紫色になりかけていました。しかし、すぐ近くの村で聞える子供達の乱暴な叫び声と、はげしく吠える犬の声とが、だんだん高くなって来て、とうとうおしまいに、ボーシスとフィリーモンとは、お互の言ってることが、ほとんど聞き取れないくらいになってしまいました。
『ああ、婆さん、』とフィリーモンは叫びました、『誰か気の毒な旅人が、向うの村で宿を乞うているのに、御飯をたべさしたり、宿を貸したりするどころか、村人達はまたいつものように、犬をけしかけたりしているんじゃないかなあ!』
『ほんとにねえ!』とボーシスは答えました、『村の人達が、も少し他人様に親切な気持になってくれるといいのにねえ。それにまあ、子供達をあんな悪い育て方をして、よその人に石を投げつけると頭をなでてやるというわけなんだからねえ!』
『あの子供達は、決
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