を活動させるために、そんなことをするのだそうだった。
『まあ、まあ、君達、』と、そんな予備運動の後《のち》、彼は言った、『みんなもそんなに言うんだし、プリムロウズも熱心に希望しているんだから、何とかやって見ることにしよう。そして、こんな吹雪なんてものがまだなかった時代には、どんなに楽しい時があったかということを君達に知ってもらうために、この世界がスウィート・ファーンの真新しい唸独楽《うなりごま》みたいに新品のぱりぱりだった古い昔のうちでも一番大昔のお話をしましょう。その時代には一年に一つの季節しかなく、それがまたうれしい夏だけでした。それから、人間の年齢にも一種類しかなく、子供ばかりでした。』
『そんな話今まで聞いたことがないわ、』とプリムロウズが言った。
『勿論、そうだろう、』とユースタスは答えた。『僕のほかには誰も考えたこともないような話でね、――子供の楽園の話だけど――ちょうどこのプリムロウズみたいな、小さないたずらっ児がいけなかった為めに、それがめちゃめちゃになってしまうというわけなんだ。』
そこでユースタス・ブライトは、今その上を跳び越えて見せたばかりの椅子に坐って、カウスリップを膝に乗せて、みんなに静かにするように言ってから、パンドーラという困ったいたずらっ児と、その遊び相手のエピミーシウスとの話を始めた。次の頁から、ユースタスが話した通りに、その話を皆さんに読んでいただきましょう。
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子供の楽園
この古い世界が、まだ出来たばかりの、遠い遠い昔のこと、エピミーシウスという子がいました。その子は、はじめからお父さんもお母さんも無しでした。それではあんまり淋しかろうというので、やっぱりお父さんもお母さんもない今一人の子供が、エピミーシウスと一しょに暮らして、彼の遊び友達ともなり、相談相手にもなるようにと、遠い国から遣わされて来ました。彼女の名はパンドーラといいました。
パンドーラがエピミーシウスの住んでいる小さな家へはいって来た時、第一に目についたのは、一つの大きな箱でした。そして、彼女が閾《しきい》をまたいでから、ほとんど最初に彼に尋ねたことは、こうでした。
『エピミーシウス、あの箱には何がはいっているの?』
『僕の大好きな小さなパンドーラ、』とエピミーシウスは答えました、『それは秘密なんだ。後生だから、あの箱のことはなんにも訊かないでおくれよ。あの箱は大切に取っておくようにと言って、ここに置いて行かれたんで、僕も何がはいっているか知らないんだ。』
『でも、誰があんたにそれをくれたの?』パンドーラは尋ねました。『そして何処から来たもんなの?』
『それもやっぱり秘密なんだ、』エピミーシウスは答えました。
『なんてじれったいんでしょう!』パンドーラは唇を尖がらして叫びました。『あたしあんな大きな、いやな箱はどっかへ持って行ってしまってほしいわ!』
『さあ、もう箱のことなんか考えないで、』とエピミーシウスは叫びました。『そとへ飛び出して行って、ほかの子供達と何か面白いことをして遊ぼうよ。』
エピミーシウスとパンドーラとが生きていた時からは、もう幾千年にもなります。そして今日《こんにち》では、世の中もその頃とは大変違ったものになりました。その頃には、誰もみんな子供でした。その子供達の面倒を見るお父さんやお母さんは要りませんでした。何故かというと、あぶないなんてことはないし、心配なことなんかもなんにもないし、又、着物をつくろうこともいらないし、それから、食べ物や飲み物は何時《いつ》でもどっさりあったからです。御馳走がたべたくなれば、いつでも木を見ればそれがなっていました。朝、木を見ると、その日の晩御飯の花が咲いていました。また、夕方には、明日の朝御飯の新しいつぼみが目につきました。本当にとても愉快な生活でした。する仕事もなければ、調べる学課もなく、ただ長い一日を朝から晩まで、子供達が遊んだり踊ったり、可愛らしい声でしゃべったり、鳥のように楽しく歌ったり、わあっと面白そうに笑ったりしているだけでした。
とりわけ驚くべきことは、子供達がお互にちっとも喧嘩をしないし、まるで泣くということがないし、又、世の始まりからこの方、子供達が一人も、仲間を離れて隅っこの方でふくれていたりしたことがないということでした。ああ、そんな時代に生きていたらどんなにいいでしょう! 実際、今では夏の蚊みたいに沢山いる「わざわい」という、いやな、小さな、翼《はね》の生えた怪物は、まだ地上にあらわれていなかったのです。子供がその時までに経験した一番大きな苦労といえば、おそらく、あの不思議な箱の秘密が分らないからといって、パンドーラが気を揉んでいたこと位のものだったでしょう。
これもはじめのうちは、ただ「わざわい」のかすかな
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