ているところなんです。かしこい人達が僕に教えてくれたところによると、その馬が、何処かにいるとすれば、この辺にちがいないというのです。翼のある馬ペガッサスが、あなた方の祖先の時代によくこの辺にあらわれたように、今でもやはりやって来るかどうか、御存じですか?』
しかし、これを聞くと、その田舎の人は笑い出しました。
君達のうちには、多分、このペガッサスというのは、美しい銀色の翼をした、真白な駿馬《しゅんめ》で、大抵はヘリコン山の頂《いただき》で暮らしているのだということを聞いた人があるでしょう。それは空中を飛ぶ時、雲の中までも舞上るほどのどんな鷲にも負けないくらいに、荒く、速く、身軽でした。世の中に、これほどのものは、ほかにありませんでした。それは仲間もなく、またそれに乗ったり、馬勒をかけたりして、主人となった人もまだありませんでした。そして、長年の間、それはひとりきりで、幸福に暮らしていました。
おう、翼のある馬になったら、どんなにすばらしいでしょう! ペガッサスは事実、夜は高い山の頂《いただき》に眠り、昼間は大方、空中を飛び廻っていて、ほとんど地上のものとは思えませんでした。それが人々の頭上高く、銀色の翼に陽をうけて飛んでいるのを見ると、それは空のものだという気がしたでしょうし、また少し低く降りすぎた時には、地上の霧や雲にふみ迷って、帰りの道を捜しているのだと思われたことでしょう。それが白く光った羊の毛のような雲のまん中へ飛び込んで行って、ちょっとの間その中に姿を消したかと思うと、今度は反対の側から飛び出して来るのを見ていると、実にきれいでした。また、陰気な雨風になって、空が一面の灰色の雲におおわれている時、この翼のある馬がまっすぐに雲を突き抜けて下りて来て、そのあとから雲の上の嬉しい光がさすようなことが時々ありました。次の瞬間には、もっとも、ペガッサスもその嬉しい光も一しょに、消え去ってしまうのでしたが。しかし、運よくこの不思議な光景を見た人は誰でも、その後一日中、嵐のつづいている間は、愉快な気持になりました。
夏の時分、この上もない上天気の日には、ペガッサスはよく地上におりて来て、その銀色の翼をたたんで、気晴らしに、丘や谷を越えて、風のような速さで駆けることがありました。ほかのどこでよりも、ピリーニの泉の近くで、おいしい水を飲んだり、岸のやわらかい草の上に
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