ぐその次には、三つも頭のある、おそろしい犬になって、ハーキュリーズにむかって、唸ったり吠えたりして、つかまえている手に、はげしく咬みつこうとしました! けれどもハーキュリーズは放そうとしませんでした。三つあたまの犬から、すぐにまた何になったかというと、あの六本足の怪人ヂェリオンで、つかまえられている一本を振放そうとして、五本の足でハーキュリーズを蹴りました! しかしハーキュリーズは、やっぱりつかまえていました。やがてヂェリオンの姿が見えなくなって、今度は、ハーキュリーズが赤ちゃんの時締め殺したのに似た、しかしその百倍もあろうかと思われる大きな蛇になりました。それは彼の頸や胴にぐるぐると巻きついて、尻尾を高く振上げ、彼を丸呑みにでもしそうな風に、おそろしい口をあけました。だからそれは本当に大変おそろしい有様でした! それでもハーキュリーズは少しもおそれず、その大きな蛇を、うんときつく握り締めましたので、まもなくそれは苦しがって、しゅっしゅっというような声を出して鳴きはじめました。
ここでことわっておき度《た》いのは、その「海の老人」は、まるで波に打たれた船首像みたいでしたが、なんでも好きなものに化ける力を持っていたということです。彼がハーキュリーズにそんなに手荒くつかまえられていたと知った時、その魔力でいろんなものに化けて、彼をおどかし、こわがらせて、さっさと手を放させてやろうと思ったのでした。もしもハーキュリーズが手をゆるめていたならば、「老人《オウルド・ワン》」はきっと海の底へもぐり込んでしまって、一旦そこへはいってしまったとなると、ぶしつけな質問などに答えるためにわざわざ浮き上って来てくれるなんてことは、なかなか無かったでしょう。百人のうちの九十九人までは、僕が思うのに、彼が最初いやなものに化けた時に、もうすっかりたまげてしまって、早速逃げ出したことでしょう。というのは、本当の危険と、ただ危険そうに見えるだけのものとを見分けるということは、この世の中で一番むずかしいことの一つですから。
しかし、ハーキュリーズがどうしても手をはなさず、「老人《オウルド・ワン》」がいろんなものに化ける度《たび》によけいに強く締めつけて来て、本当に随分痛い思いをさせられたので、彼もとうとう、もとの自分の姿になるのが一番いいと思いました。そこで彼は再び、さかなみたいで、うろこがあっ
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