を活動させるために、そんなことをするのだそうだった。
『まあ、まあ、君達、』と、そんな予備運動の後《のち》、彼は言った、『みんなもそんなに言うんだし、プリムロウズも熱心に希望しているんだから、何とかやって見ることにしよう。そして、こんな吹雪なんてものがまだなかった時代には、どんなに楽しい時があったかということを君達に知ってもらうために、この世界がスウィート・ファーンの真新しい唸独楽《うなりごま》みたいに新品のぱりぱりだった古い昔のうちでも一番大昔のお話をしましょう。その時代には一年に一つの季節しかなく、それがまたうれしい夏だけでした。それから、人間の年齢にも一種類しかなく、子供ばかりでした。』
『そんな話今まで聞いたことがないわ、』とプリムロウズが言った。
『勿論、そうだろう、』とユースタスは答えた。『僕のほかには誰も考えたこともないような話でね、――子供の楽園の話だけど――ちょうどこのプリムロウズみたいな、小さないたずらっ児がいけなかった為めに、それがめちゃめちゃになってしまうというわけなんだ。』
 そこでユースタス・ブライトは、今その上を跳び越えて見せたばかりの椅子に坐って、カウスリップを膝に乗せて、みんなに静かにするように言ってから、パンドーラという困ったいたずらっ児と、その遊び相手のエピミーシウスとの話を始めた。次の頁から、ユースタスが話した通りに、その話を皆さんに読んでいただきましょう。
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    子供の楽園

 この古い世界が、まだ出来たばかりの、遠い遠い昔のこと、エピミーシウスという子がいました。その子は、はじめからお父さんもお母さんも無しでした。それではあんまり淋しかろうというので、やっぱりお父さんもお母さんもない今一人の子供が、エピミーシウスと一しょに暮らして、彼の遊び友達ともなり、相談相手にもなるようにと、遠い国から遣わされて来ました。彼女の名はパンドーラといいました。
 パンドーラがエピミーシウスの住んでいる小さな家へはいって来た時、第一に目についたのは、一つの大きな箱でした。そして、彼女が閾《しきい》をまたいでから、ほとんど最初に彼に尋ねたことは、こうでした。
『エピミーシウス、あの箱には何がはいっているの?』
『僕の大好きな小さなパンドーラ、』とエピミーシウスは答えました、『それは秘密なんだ。後生だから、あの箱のことはなんに
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