の前に――
毎年十月が来て、また去って行くように、金色の十月の日が過ぎて、鳶色《とびいろ》の十一月も同じく過ぎ、寒い十二月もまた大方終りに近づいた。とうとう楽しいクリスマスになって、それと一しょにユースタス・ブライトが来たが、彼が一枚加わると、クリスマスも一層楽しいものとなるのであった。そして、彼が大学から帰って来た翌日、ひどい吹雪《ふぶき》になった。その日まで冬もためらっていたのか、幾日も温和な日がつづいたが、それはちょうど冬の皺くちゃの顔に浮かんだ微笑みたいなものだった。丘の南向の斜面だとか、石塀で風をよけたところなどには、まだ緑のままの草が残っていた。つい一二週間前、十二月になってからのことだが、子供達はシャドウの谷川が谿間から流れ出るあたりの岸辺に、たんぽぽが一つ咲いているのを見つけたりした。
しかし今ではもう、青草もたんぽぽも見られなかった。これはまたひどい吹雪なんだから! 大気を真白にして渦巻く吹雪の中で、もしもそんなに遠目が利くものとしたら、タングルウッドの窓からタコウニック山の円い頂《いただき》まで、一目で二十マイルの吹雪が見られるわけだった。その辺の山々を巨人達とすれば、それらの巨人達がでかい[#「でかい」に傍点]雪合戦を始めて、おそろしく大きな雪の玉を、お互に投げ合っているようにも見えた。ひらひらと舞下る雪片があまりに繁く、大抵は、谷の中程の立木さえそれに消されて見えなかった。尤も、時々は、モニュメント山のぼんやりした輪郭や、その麓に凍る湖水のなめらかな白いおもてや、もっと近くの黒や灰色の森林地帯などが、タングルウッドにこもる子供達の目に見分けられることもあった。しかしそれとても、吹雪をすかしてちょっと見えるだけのことだった。
でも、子供達はこの吹雪をとても喜んだ。彼等は一番深い吹溜《ふきだまり》の中へとんぼ返りを打って見たり、われわれがさっきこのバークシア地方の山々がやっているように想像した雪投げをしたりして、とっくに吹雪とは仲よしになってしまった。それから今度は、彼等の広い遊戯室に引揚げて来たのだが、そこは大広間に負けないほど大きくて、大小いろいろの遊び道具で一杯だった。中でも一番大きいのは揺木馬で、本当の子馬みたいだった。それから、屑布人形のほかに、木製や、蝋細工や、石膏や、瀬戸物などの人形の大家内《おおがない》がならんでいた。また
前へ
次へ
全154ページ中57ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング