――ことにこの狭い日本では、碌《ろく》でもない人間が殖《ふ》え過ぎて甚《はなは》だ困っている。怠惰者《なまけもの》や意気地無しがドシドシ死んでしまえば、穀潰《ごくつぶ》しの減るだけでも国家の為に幸福かも知れぬ。
吾党《わがとう》は大いに夏を愛する。暑ければ暑い程鋭気に満ちて来る。やれやれ、何か面白い事をやってくれようと、そこで企てたのが本州横断徒歩旅行! もちろん亜弗利加《アフリカ》内地旅行だの、両極探検だのに比すれば、まるで猫の額を蚤《のみ》がマゴついているようなものであるが、それでも、口をアングリ開けて昼寝をしているよりは、千倍も万倍も愉快に相違ない。
出発は八月十日、同行は差当り五人、蛮カラ画伯|小杉未醒《こすぎみせい》子、髯《ひげ》の早大応援将軍|吉岡信敬《よしおかしんけい》子、日曜画報写真技師|木川専介《きがわせんすけ》子、本紙記者|井沢衣水《いさわいすい》子、それに病気揚句の吾輩《わがはい》である。吾輩は腹式呼吸と実験から得た心身強健法とで、漸《ようや》く病気の全快したばかりのところへ、要務が山積しているので、実は徒歩発足地の水戸まで一行を見送り、そこで御免を蒙《こうむ
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