くわい》で堪《たま》らない、丁度《ちやうど》牧塲《まきば》に遊《あそ》ぶ小羊《こひつじ》のやうに其處此處《そここゝ》となく飛《と》んで歩《ある》いて、折々《をり/\》私《わたくし》の側《そば》へ走《はし》つて來《き》ては甲板《かんぱん》の上《うへ》に裝置《さうち》された樣々《さま/″\》の船具《せんぐ》について疑問《ぎもん》を起《おこ》し、又《また》は母君《はゝぎみ》の腕《うで》にすがつて遙《はる》かに見《み》ゆる島々《しま/″\》を指《ゆびざ》し『あれは子ープルス[#「子ープルス」に二重傍線]の家《いへ》の三|階《がい》から見《み》へるエリノ[#「エリノ」に二重傍線]島《しま》にその儘《まんま》です事《こと》、此方《こなた》のは頭《あたま》の禿《は》げた老爺《おぢい》さんが魚《さかな》を釣《つ》つて居《を》る形《かたち》によく似《に》て居《ゐ》ますねえ。』などゝいと樂《たの》し氣《げ》に見《み》えた。
日《ひ》は漸《やうや》く高《たか》く、風《かぜ》は凉《すゞ》しく、船《ふね》の進行《すゝみ》は矢《や》のやうである。私《わたくし》は甲板《かんぱん》の安樂倚子《あんらくゐす》に身《み》
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