よ》ふた。
船長《せんちやう》は一時《いちじ》は毒々《どく/\》しく私《わたくし》の顏《かほ》を眺《なが》めて嘲笑《あざわら》つて居《を》つたが此時《このとき》稍《や》や眞面目《まじめ》になつて其《その》光《ひかり》の方《かた》を眺《なが》めつゝ
『然《しか》し妙《めう》だぞ、今月《こんげつ》の航海表《かうかいへう》によると、今頃《いまごろ》此《この》航路《かうろ》を本船《ほんせん》の後《あと》を追《お》ふて斯《か》く進航《しんかう》して來《く》る船《ふね》は無《な》い筈《はづ》だが。』と小首《こくび》を傾《かたむ》けたが忽《たちま》ちカラ/\と笑《わら》つて
『あゝ分《わか》つた/\、畜生《ちくしやう》巧《うま》くやつてるな、此前《このまへ》あの邊《へん》で沈沒《ちんぼつ》したトルコ[#「トルコ」に二重傍線]丸《まる》の船幽靈《ふないうれい》めが、まだ浮《うか》び切《き》れないで難破船《なんぱせん》の眞似《まね》なんかして此《この》船《ふね》を暗礁《あんせう》へでも僞引寄《おびきよ》せやうとかゝつて居《い》るんだな、どつこい、其手《そのて》は喰《く》はんぞ。』と呟《つぶや》きながら私
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